土地売却時の節税方法11選|発生する税金と種類を徹底解説
土地を売却する際には、税金がかかります。支払う税額は売却額に応じて異なり、場合によっては100万円以上の納税が必要になることもあります。
不動産売却に関わる税金には、さまざまな節税対策があり、損失を回避し有利に売却を進めるためには、事前に節税方法を理解しておくことが重要です。
本記事では、土地売却時にかかる税金の種類や、活用できる節税方法をわかりやすく解説します。さらに、譲渡損失が発生した場合の税金対策についてもご紹介していますので、税負担を軽減しながら計画的な売却を目指している方は、ぜひご一読ください。
【土地売却の前に知っておきたい】発生する税金の種類
土地を売却するときに発生する税金は、主に次の3種類に分けられます。
- 印紙税
- 登録免許税
- 譲渡所得税
それぞれ順番に詳しく解説していきます。
土地売却時に発生する印紙税・登録免許税
土地売却において、売買契約を結ぶ際や引き渡し時には、「印紙税」と「登録免許税」の支払いが必要です。
まず、印紙税は売り主と買い主が契約書を交わす際に必要となる税金です。契約書には印紙を貼付する義務があり、この税金を支払う必要があります。
印紙税の金額は、売買契約の金額に応じて200円から60万円まで変わります。ご自身に必要な金額は、国税庁のホームページで確認し、事前に用意しておきましょう。
次に、登録免許税ですが、これは土地の名義を変更する際にかかる税金です。通常、所有権の移転に伴う登録免許税は買い主が負担するのが一般的で、売り主は支払う必要はないケースが多いです。
ただし、売却する土地に抵当権が設定されている場合は注意が必要です。抵当権は借入の際に不動産を担保として設定されるもので、債務不履行が生じた場合に、債権者が担保から優先的に弁済を受ける権利です。
土地に抵当権が設定されている場合、売却前にその抵当権を抹消する必要があり、その際に登録免許税がかかります。抵当権の抹消登記には、1不動産あたり1,000円の費用が発生します。
譲渡所得に対して課される譲渡所得税
土地を売却して利益が生じた場合、その利益に対して所得税や住民税が課せられます。このように、譲渡所得に対して課される税金を「譲渡所得税」といいます。
なお、通常、資産を売却すると消費税がかかりますが、土地については消費税が非課税です。土地は製品やサービスのように「消費される」という概念がないため、消費税の対象外となります。したがって、売り主が法人であっても個人であっても、土地には消費税が課されません。
ここでは、譲渡所得の具体的な考え方とその計算方法について説明します。
譲渡所得の考え方
土地売却における譲渡所得は、一般的な商売における「利益」とは異なり、次の計算式で求められます。
【譲渡所得 = 譲渡金額 ― 購入金額 ― 譲渡費用】
各項目の具体的な内容は、以下の通りです。
金額・費用 | 説明 |
譲渡金額 |
土地の売却金額 |
購入金額 |
土地購入時の費用や手数料、購入後の改良費・設備費の総額 ※購入金額が不明な場合、または購入金額が譲渡金額の5%を下回る場合は、譲渡金額の5%を購入金額として計算します。 |
譲渡費用 |
仲介手数料・印紙税・立退料・建物の解体費用など |
このように、譲渡所得は「土地を売った金額」から購入金額や関連費用を差し引いた残りの金額を指します。
この差額がプラスの場合、譲渡所得に対して税金がかかり、譲渡所得税が発生します。一方で差額がマイナス、つまり譲渡損失が発生した場合は税金はかかりません。
譲渡所得税の求め方
譲渡所得税を計算する際、土地の所有期間が「5年未満」か「5年以上」かによって税率が異なります。
所有期間別の具体的な税率は、次の通りです。
所有期間 |
所得の種類 |
所得税率 | 住民税率 |
5年未満 | 短期譲渡 |
30% |
9% |
5年以上 | 長期譲渡 |
15% |
5% |
もし売却予定の土地が所有期間5年未満である場合、税負担を軽減するために、売却時期を見直して所有期間を5年以上に延ばすことを検討する価値があります。これにより、税率を抑えて売却できる可能性があります。
不動産売却時の税金を節税する方法11選
土地を売却する際に発生する税金の中で、節税が可能なものは「譲渡所得税」です。
ここでは、譲渡所得税を抑えるための11の具体的な方法をご紹介します。該当する節税策があれば、ぜひ参考にしてみてください。
1. 土地の購入金額がわかる資料を探す
土地購入時の金額が不明な場合、譲渡所得は譲渡金額の5%を購入価格とみなして計算されます。これにより、実際よりも高い譲渡所得が計算され、税額が増える可能性があります。
そのため、土地購入時の資料を手元に用意し、実際の購入価格をもとに譲渡所得を計算することで、余分な税負担を避けることが可能です。
購入金額が確認できる主な資料は、以下の通りです。
- 購入時の売買契約書
- 領収書
- 住宅ローンの抵当権設定金額
- 買戻特約の金額
- 購入当時のチラシ
- 購入者が記録したメモや日記
- 同時期に購入した隣人の購入金額
売却する前に、これらの資料が手元にあるか確認しておきましょう。
2. 購入金額・譲渡費用を漏れなく計上する
譲渡所得は、譲渡金額から土地の購入金額や譲渡費用などを差し引くことで算出されます。購入や譲渡にかかった費用を正確に計上することで、譲渡所得が抑えられ、結果として支払う税金も減少します。
以下に、計上できる費用の例を挙げます。
購入金額 |
費用例 |
土地や建物の購入費用、建設費用、購入時の手数料 | |
設備投資や改修費用 | |
登録免許税、登記費用、不動産取得税、特別土地保有税、印紙税 | |
借主から土地を購入するために支払った立退料 | |
土地の埋立て、土盛り、地ならしの造成費 | |
土地購入時の測量費 | |
所有権確保のための訴訟費用 | |
建物の取り壊し費用(購入後1年以内に解体し、土地利用に必要と認められる場合) | |
土地購入に伴う利子(使用前の期間に発生した分) | |
他の土地を取得する際に支払った違約金 | |
リフォーム費用 |
譲渡費用 | 費用例 |
仲介手数料や印紙税 | |
立退料や名義書換料 | |
建物の解体費用および損失額 | |
売買契約解除時の違約金 |
これらを漏れなく計上することで、譲渡所得を抑えることが可能です。
3. マイホームがあった土地なら特例を活用する
自宅を取り壊して土地を売却する場合、「3,000万円の特別控除」を受けられる特例があります。この特例を利用すると、譲渡所得のうち3,000万円まで非課税となり、大幅に税負担を減らすことが可能です。
特例の適用条件は、次の通りです。
- 自宅とその土地を売却すること(現在住んでいない場合は、住まなくなってから3年目の12月31日までに売却する必要があります)
- 取り壊した家屋については、1年以内に契約を結び、売却すること
- 取り壊し後、土地を駐車場などとして使用していないこと
- 災害で自宅を失った場合も、3年目の12月31日までの売却が対象
また、10年以上所有している土地については「軽減税率の特例」も利用できます。これは、売却年の1月1日時点で所有期間が10年を超えている場合に適用されます。
軽減税率の具体的な税率は、3,000万円の特別控除適用後の譲渡所得に対し、次の通りです。
譲渡所得金額 | 所得税 | 住民税 |
6,000万円以下の部分 | 10% | 4% |
6,000万円を超える部分 | 15% | 5% |
特別控除を適用した後でも譲渡所得が大きい場合、10年を超えたタイミングで売却すると、税率を抑えることができます。売却時期を計画的に検討しましょう。
4. 税率が下がる5年超で売却する
譲渡所得にかかる税率は、土地の所有期間によって異なります。「譲渡所得税の求め方」で説明したように、所有期間が5年を超えると所得税率が引き下げられます。
そのため、売却を検討している場合、所有期間が5年に近いタイミングであれば、少し待って売却するのが得策です。たった1~2年待つだけで、所得税と住民税の合計税率が19%も下がるため、簡単に実践できる節税対策の一つです。
所有期間が5年に近い方は、売却時期を慎重に検討してみてください。
5. 増税前に売却する
税制は毎年見直されており、土地の売買に関連する税金も影響を受けます。例えば、令和6年の税制改正では、印紙税や登録免許税、不動産取得税に対する減税措置が延長されました。
このように、減税措置が適用されている間に売却すれば、税負担を軽減できます。税制の変更を注意深くチェックし、増税が予定される前に売却を検討することが、効果的な節税方法の一つです。
6. 相続で取得した土地の場合は特例を利用する
相続や遺贈で取得した土地を売却する際、「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」が適用できます。この特例を利用することで、譲渡所得税を軽減することが可能です。
特例を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 相続または遺贈により取得した土地であること
- 土地を取得した本人が相続税を支払っていること
- 相続開始の日の翌日から、相続税の申告期限を過ぎた日から3年以内に売却すること
この特例を利用すれば、相続から3年以内に売却することで節税が期待できます。売却を検討する際は、3年以内に完了できるよう早めに計画を立てましょう。
7. 相続で空き家を取得して取り壊した場合は特例を利用する
相続で取得した空き家を取り壊した後、その土地を売却する場合にも特例を利用できます。この特例は「空き家」を対象としており、一定の条件を満たすことで譲渡所得から最大3,000万円の控除を受けることが可能です。
ただし、特例の適用には細かな要件があります。国税庁の提示する情報を十分に確認した上で利用しましょう。
主な要件は、以下の通りです。
- 相続された空き家が昭和56年5月31日以前に建てられたものであること
- 耐震リフォームを行って売却するか、または取り壊してから土地を売却すること
- 売却が平成28年から令和9年までの間に行われること
耐震リフォームや取り壊しには費用がかかるため、事前にコストと控除のバランスを検討する必要があります。費用と節税メリットを比較して、適切な売却計画を立てましょう。
8. 譲渡金額500万円以下なら未利用土地の特別控除を利用する
特定の条件を満たす土地を500万円以下で売却する場合、「低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」を利用できます。これにより、譲渡所得から100万円を控除することが可能です。
特別控除を受けるための主な条件は、次の通りです。
- 売却する土地が都市計画区域内の低未利用土地であること
- 売却時点で所有期間が5年以上であること
- 建物を含めた売却価格が500万円以下であること
適用の詳細については、国税庁のホームページを参考にしてください。
9. 平成21年~22年に取得した土地は1,000万円特別控除を利用する
平成21年~22年に購入した土地を売却する場合、譲渡所得から1,000万円の控除できる特例があります。この特例は、リーマンショック後に不動産市場を活性化するために導入された措置です。
特別控除を受けるための条件は、以下の通りです。
- 土地を平成21年~22年の間に取得していること
- 売却時点で取得から5年以上経過していること
- 相続や遺贈、贈与、交換による取得でないこと
- 他の控除や特例(収用や資産買換えの特例など)を受けていないこと
この控除は適用条件が限られていますが、他の控除が使えない場合は、対象となるかを確認しておくと良いでしょう。
10. 共有名義人全員で特別控除を利用する
複数人で共有する土地を売却する場合、各名義人が個別に特別控除を受けることで、節税効果を最大限に引き出すことが可能です。
例えば、「居住用財産の3,000万円特別控除」を活用する場合、条件を満たせば各共有名義人がこの控除を受けられます。
もし共有名義人の一部が適用外であっても、他の名義人には影響しないため、全員で一度申請を試みることをおすすめします。
11. 住宅ローン控除と比較し有利な節税対策を選ぶ
土地を売却して新しい家を購入する場合は、住宅ローン控除も選択肢に入れるべきです。住宅ローン控除は、返済期間が10年以上の住宅ローンを利用してマイホームを購入した際に、一定期間、所得税から一定額が控除される制度です。
ただし、次の特例は住宅ローン控除と同時に利用できないため、どちらがより有利かを比較する必要があります。
- 居住用財産の3,000万円特別控除
- 所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率特例
- 特定の居住用財産の買換え特例
これらの制度を利用する際は、住宅ローン控除と比較し、どちらがより節税効果が高いかを検討して最適な方法を選びましょう。
土地を売却する際に譲渡損失が生じた場合の税金対策
譲渡所得が発生しなければ、譲渡所得税は課税されません。つまり、土地の売却で譲渡損失が発生すると、譲渡所得税はかかりませんが、利益を得られず損失が発生している状況です。
譲渡損失が生じた場合、確定申告を行うことで損益通算が可能です。これにより、土地売却時に発生した譲渡損失を他の所得から差し引き、結果として税金を減額できます。
損益通算で相殺できる主な所得は、次の通りです。
- 不動産所得
- 事業所得
- 譲渡所得
- 山林所得
これらの所得がある場合は、確定申告を通じて税金の軽減を図ることが可能です。譲渡損失が生じた際は、ぜひ活用しましょう。
まとめ
土地を売却する際には、印紙税、登録免許税、譲渡所得税が発生しますが、節税できる部分は「譲渡所得税」に限られます。
本記事でご紹介した、譲渡所得税を軽減するための具体的な11の方法をぜひ参考にして、ご自身に合った節税対策がないか確認してみてください。
最後に協和建設では、岐阜県各務原市、石川県金沢市を拠点に、土地活用のサポートや土地売却の支援を行っています。相続で取得した土地や、購入した土地を売却したいとお考えの方は、お気軽にご相談ください。